- ママでも、カワイイもの、乙女ちっくなものが大好き!
- 物語の中にしか登場しない、ちょっと変わっていて、でもおいしそうな食べ物が出てくる絵本に目がない!
絵がすごくかわいくて、色彩がほんわかしていて、乙女心をくすぐるストーリー。そんな絵本を紹介します。
Contents
『チリとチリリ』あらすじ
いつも一緒、なかよしのチリとチリリ。
自転車に乗って家を出たふたりは、森の中のさまざまな場所へ行きます。
森の中では、いろいろな動物たちが、喫茶店やら、サンドイッチ屋さんやらを営んでいました。
チリとチリリが、森で最後に行きついた先は…森のホテル!
ふたりに「ちょうどよい」部屋があてがわれました。
さて、そのホテルでは、今夜催し物があるみたいですが、それは…?
チリとチリリって?
おかっぱ頭に、赤いほっぺ。双子のようにそっくりなチリとチリリは、自転車に乗って、どこへでも出かけちゃう、身軽な女の子!
ふたりが出かける先では、いつも不思議なことが待ち構えています。
2003年に刊行された『チリとチリリ』から始まり、現在シリーズ7冊が発売されています。
- 『チリとチリリ』
- 『チリとチリリ』うみのおはなし
- 『チリとチリリ』まちのおはなし
- 『チリとチリリ』はらっぱのおはなし
- 『チリとチリリ』ゆきのひのおはなし
- 『チリとチリリ』ちかのおはなし
- 『チリとチリリ』あめのひのおはなし
そんな『チリとチリリ』。一体、どこが魅力なのでしょうか?
『チリとチリリ』シリーズの魅力
16年もの長きにわたり続いている『チリとチリリ』。
お話の魅力を4点、お話します。
魅了① 色鉛筆画による完成度の高い美しい絵
まるでおとぎの国を再現したかのような、世界観。
絵のかわいさと、美しい色彩、表紙のデザインセンスに惹かれて絵本を手に取る人は、かなり多いのではないでしょうか?
この絵本を作っている人、どいかやさん。
東京造形大学デザイン学科卒業。在学中に所属していた「絵本クラブ」が絵本づくりのきっかけとなったそうです。
どいさんの絵は、ほとんどが色鉛筆で描かれています。淡くて繊細、微妙な色合いが重なり合った独特の色彩が、そのまま絵本の世界観に繋がっていて、お話に絶妙な色を添えています!
魅力② 架空のおいしそうな食べ物
『チリとチリリ』シリーズすべての本に、食べ物が描かれていますが、実はどれも、実際にはないものばかり。
これまでに登場した食べ物で印象的だったのは
- どんぐりコーヒー
- なみのあわパフェまきがいふう
- うみのソーダゼリー しんじゅクリームのせ
- しぼりたてはっぱのミックスジュース やまももとのいちごのつぶつぶ入り
ね?どれも、現実にはないものばかり!
それだけに、「どんな味がするんだろう?食べてみた―い!」と想像が止まらなくなります。
素敵なネーミングセンスと、おいしそうな絵も、とっても魅力的なんです!
児童書『ライオンと魔女』(ナルニア国物語シリーズ)で、エドが食べた悪魔的においしいプディングを、子ども心に「ものすごくおいしそう…!」 と思ったことを思い出しました。
魅力③ 自転車に乗ってどこへでも行けることの可能性
チリとチリリは、自転車に乗って、どこにでも行きます。
森の中も、原っぱを突っ切っても、地下へも、海の中(!)でも。
そして、雪が降って地面がつるつるしていても、大雨に打たれても、まったく気にせず、ひたすら楽しそうに自転車をこいでいく。
この「自転車で」というのが、ひとつのポイントとなっている気がします。
小さな女の子。徒歩で、だったら、きっとそんなに遠くへは行けないし、行けるところは限られてきます。
電車やバスのような、乗り物に乗ってどこかへ行く、というのだったら、現実的に過ぎるし、今度は行動範囲が広がり過ぎる。
風を切って、自力で走る自転車は、ふたりの身軽さや自由さをよく表している乗り物だと思いますし、自転車に乗って颯爽と走る彼女たちは、何にも縛られず自立していて、大人の私も憧れます。
『赤毛のアン』や『若草物語』、『長くつしたのピッピ』など、児童少女小説には、女の自立が描かれている者が多くあり、彼女たちにに憧れを抱いたものですが、『チリとチリリ』からも、同じ匂いを感じます。
魅力④ 「ちょうどぴったり」。身の丈にあった生活
『チリとチリリ』には、シリーズ全般を通して、よく「ちょうどぴったり」という言葉が登場します。
『チリとチリリ』で辿りついた森のホテルでは、ふたりにちょうどぴったりの大きさのベッドがある部屋をあてがわれます。
『チリとチリリ うみのおはなし』では、ふたりにちょうどぴったりのたからものを見つけますし、『チリとチリリ ゆきのひのおはなし』では、ちょうどよい大きさのカップに、りんごとニッキのホットフルーツパンチを貰いました。
チリとチリリのふたりだけではなく、出てくる動物たちも「ちょうどぴったり」のおうちに住んでいます。
「ちょうどぴったり」は、「身の丈に合う」という言葉に置き換えられます。
このお話には、欲深い登場人物はひとりも出てきません。
みんな、自分に合った暮らしをしています。
チリとチリリは本能の赴くまま、自転車に乗って冒険に出かけますが、出かけた先でひどい目に遭うこともありません。
それは、彼女たちが、出会う動物たちの生活を脅かすことがなく、その小さなからだに見合った行動をしているからではないでしょうか。
欲は出さず、好奇心だけを頼りに突き進む、チリとチリリ。どんな不思議な出来事に遭遇しても、あるがままを受け入れている姿には、頼もしさすら感じてしまいます。
『チリとチリリ』シリーズで一番好きな絵本は?
刊行されているシリーズ7巻を制覇した私が、シリーズ中でもっとも好きなおはなし。
それは、『チリとチリリ まちのおはなし』です。
チリとチリリが、街のいろいろなお店にいくのですが、それが女の子の好きなものを凝縮させたお店ばかりで…!
いとやさんで、はなびらぞめの糸を購入し、その糸を織工房でマフラーにしてもらうなんて、手芸好きな女の子には、たまらないですよね♡
それに、作者のどいかやさんが、旅行先のチェコをイメージされて描いた街が、とっても素敵なんです!
チリとチリリが最後に辿りついたお屋敷でふるまわれた、ナッツときのこがたっぷり入った、じゃがいもとかぼちゃの2色のスープなんて、本当においしそうで…!
私は、このシーンが大好きです♡
女の子の大好き!が随所にちりばめられた絵本。一度手に取ってみてはいかがでしょうか?
『チリとチリリ』絵本データ
- 作・絵 どいかや
- 出版社 アリス社
- 発行日 2003年5月