こんにちは、カピバラです。
何気ない日常が、とびきり素敵なものとして映る、そんな魅力のある本を紹介します♡
『麦本三歩の好きなもの』住野よる
衝撃的なタイトルと、映像化もされて話題となった、『君の膵臓が食べたい』の作者さんの作品です。
Contents
主人公の麦本三歩って、どんな子?
麦本三歩(むぎもとさんぽ)は、大学図書館に勤めている20代女子。
少し…いや、かなり天然。
挙動不審な言動で、よくぼーっとしているから、仕事でもミスを連発。しょっぱなから上司からお説教を食らっています。
お説教の内容は、図書館利用者から声をかけられて、急ぐためにクラウチングスタートの体勢をとったら、足が偉い先生に当たって、その先生を転ばしてしまったから。
三歩はいつも、ぼーっとしている。
そこへ突然声をかけられると、「ふへっ?」や「ぬおっ!」といった奇声を発してしまう。
それに、肝心なところではセリフを噛んじゃう。
上司も先輩は、そんな三歩にあきれ顔をしつつも憎めなくて、可愛がってくれています。
そんな三歩の、好きなもの。
- 朝寝坊
- チーズ蒸しパン
- ラジオ
- ブルボン
- 歩くこと
- 本・図書館
- エトセトラ・エトセトラ…
食べることに貪欲で、日常に潜む些細な幸せを探すのが得意な三歩。
『麦本三歩の好きなもの』のストーリー
物語は、連作短編の形で構成されています。
それぞれのタイトルは、すべて「麦本三歩は○○が好き」。
第三者目線で語られる三歩の行動が、滑稽なのにリアルで、笑いつつも時に胸にぐっと迫るものもあります。
文章のノリが、
『ごめんなさい前の椅子、私、新しく好きな椅子が出来ちゃったの』
とか言うあたり、まるで誰かのブログを読んでいるような既視感を感じました。
そうそう。三歩以外の登場人物は、「怖い先輩」「優しい先輩」「おかしな先輩」…と、名前が出てこないのも特徴。
麦本三歩はブルボンが好き。私もお菓子はブルボン派!
『麦本三歩はブルボンが好き』の回で、三歩は、ブルボンについて熱く語っています。
「ブルボン原理主義、ラインナップのパワーバランスを…」とか、うにゃうにゃ語りだす三歩に対し、大きく首を縦に振ってしまいました。
いや、ブルボンのあのクオリティの高さに対して、あの金額…コスパ高すぎでしょ。
麦本三歩って、本当に天然?
この物語は、大きな事件など何ひとつ起こりません。
ごく普通の女の子(?)の、些細な日常を描いています。
でも、三歩はかなり天然で抜けている女の子。周囲から「天然」と面と向かって言われることもしばしば。…本人にとっては、かなり不本意なようです。
『少なくとも、自分ではきちんと考えて生きているのに』
そう、思っています。
そして、三歩と同じ図書館員の「おかしな先輩」は、天然な三歩を「ずるいくて嫌い」だと面と向かって言います。
『今まで生きてきて、三歩だから許されてきたことってあるでしょ?それが、ずるい』
物語後半まで、三歩という人間が私に似すぎていて、
「え。住野よるさん、私のこと書いたの?」
って、前のめりで読んでいましたが、おかしな先輩が言ったセリフによって、冷や水を浴びせられた感じがしました。
私は、仲間や友達から、『天然』と言われることがあります。
その言葉を言われるたびに、いつも複雑な気持ちがします。
友達に悪気がないことはわかっていますが、『天然』と言われるたびに、世の中からツマハジキにされる感覚を受けます。
社会人になってからは、『天然』と言われないように注意しながら、仕事をしてきました。
なるべく周りの空気を読みながら、ミスをしないように慎重に…。
自分が、ちゃんとした人間であるようにふるまうことを心がけてきました。
うまく社会に適合できるように。だから、家に帰ってくると、心底ほっとします。
「あー!本来の自分に戻れた!」
って。
『麦本三歩の好きなもの』は、天然さんにおススメしたい!
これはぜひ、周りから「あなたって、天然だよね~」って言われる人にこそ、読んでもらいたい小説です。
きっと、三歩の気持ちに共感して、頷く箇所が多々あるでしょう!
まわりに『天然』な人がいる人にとっては、
「ああ~、こんなヤツ、いるいる!え、でも、そんなこと思ってたの?」
って、感じてもらえたらいいな。
そして、私は三歩と一緒に、声を大にしてこう言いたい。
『天然じゃないもん!きちんと考えて生きていましゅ!(噛んだ)』